Chapter II · Business Structures

使った瞬間だけ、
課税される

日本では、会社が利益を出した瞬間に課税されます。残しておくだけでも課税対象。対して、エストニア型の法人税制では、利益を分配した瞬間にのみ 課税が発生します。これを前提に、5つの事業形態から最適解を選びます。

The Estonian Principle

"利益" ではなく、
"分配" に課税する。

法人税率は 15%。ただし、課税されるのは「分配(配当)した時点」のみ。会社の口座に利益を残し、次のプロジェクトに再投資する限り、法人税は発生しません。成長段階の企業にとってこれは、"見えない補助金" のような役割を果たします。

Traditional · 日本型
利益発生
即 課税-30%
残った資金で再投資
The Model · エストニア型
利益発生
100% 再投資可能
分配時のみ 15%

「税金のために無理に経費を増やす」という発想が、構造的に不要になる。

— WHY STARTUPS IN EUROPE CHOOSE THIS MODEL

Overview

5つの事業形態、
それぞれの最適条件。

選択は年商・業種・国際性・成長意欲で決まります。個人フリーランスなら Micro / Small、スケールするチームなら LLC、IT分野で海外クライアント中心なら Virtual Zone — それぞれに最適な入り口があります。

01Individual Entrepreneur

個人事業主(IE)

The gateway — register first, optimize later.

すべての個人での事業活動の入り口となる登録形態。登録自体は1日〜数日で完了し、その後 Micro / Small などのステータス申請が可能になります。登録しないままフリーランスとして活動すると、自動的に20%の所得税が課される点に注意。

Registration
国家公的登録機関(NAPR)経由でオンライン登録。通常1営業日、長くて数日。
Default Tax
ステータス未取得の場合 20% の所得税が適用されます。
Next Step
年商見込みで Micro または Small のステータスを申請。Revenue Service(歳入庁)ポータルで完結。
02Micro Business Status

マイクロビジネス ステータス

A legitimate 0% — for lean, solo operations.

Tax Rate
0%
Annual Cap
30K.
GEL / 約165万円相当
Employees
0.
SOLO OPERATION ONLY
Conditions
個人事業主として登録済み・スタッフを雇わない・自分一人で完結する業務。
Typical Fit
翻訳、デザイン、Web制作、ライター等、リモート型の単独業務。
Administrative Load
税務署への申告はシンプル。月次/年次の管理が必要だが、Small に比べても軽量。
Practical Note
年商 30,000 GEL という枠は小さく見えますが、リモートワーク中心の個人事業主にとっては実質非課税で活動開始できる意味合いが大きい制度です。多くの駐在型日本人フリーランスが活用しています。
03Small Business Status

スモールビジネス ステータス

The flagship — 1% on turnover up to 500K GEL.

Standard Rate
1%
OF TURNOVER
Over Cap
3%
ON THE EXCESS
Annual Cap
500K.
GEL / 約2,700万円相当
Eligible Activities
レストラン・カフェ、輸入販売、デザイナー、講師業、マーケティング、IT 関連など幅広く該当。
Excluded
弁護士・会計士・コンサルタント等の専門サービス、金融・ギャンブル関連、および 2025年2月以降は建設サービス業(HSコード 41.2 / 42 / 43)も除外。
Employment
スタッフの雇用可能。給与には給与源泉徴収が発生。
Cap Overflow
年内に 500,000 GEL を超えた場合、超過分は 3%。ステータスは年末まで維持可能。2年連続で超過した場合、翌年1月1日に自動失効。
Agritourism
2025年1月から、農業・ワインツーリズム業は年商上限が 700,000 GEL に拡大。
VAT
12か月の課税売上 100,000 GEL 超で VAT 登録が必要(Small Business とは独立)。
Strategic View
年商 500,000 GEL のうち 1% = 5,000 GEL が税額。日本のフリーランス所得税(累進)と比較すると、多くの業種で税負担は 1/10 以下となるケースが一般的です。
04LLC / Limited Liability Company

LLC(有限会社)

15% — but only when you distribute.

Corporate Tax
15%
ON DISTRIBUTED PROFITS ONLY
On Reinvestment
0%
RETAINED EARNINGS

個人での規模を超えて、事業をスケールさせたい段階で選ぶ法人形態。LLC を設立することで、法人名義の銀行口座・取引信用・投資家との契約容易性が確保されます。そして最大の魅力は、エストニア型の「分配時課税」が適用されること。

Banking
法人名義の口座開設が可能。事業用の取引信用が確立されます。
Assets
法人名義で 証券口座・仮想通貨口座 の保有が可能。個人資産と事業資産を構造的に分離できます。
Expense Handling
経費処理が柔軟。ただし「税金のために経費を増やす」必要は構造的に不要。
Investor Relations
出資受け入れ・持分譲渡・パートナーシップ契約などが容易。
Distribution
配当・社長報酬として外に出す時点で 15% の法人所得税が発生。
Retention = 0%
設備投資・新規プロジェクト・運用資金として会社に残す限り、法人税はかかりません。
05Virtual Zone Entity

Virtual Zone(仮想ゾーン)

For IT companies exporting services — 0% CIT on foreign revenue.

CIT / Foreign Rev.
0%
VAT / Export
0%
Registrants (2024)
1,275.
GRANTED VZE STATUS

IT 企業が海外クライアントに提供するサービス収益に対して、法人所得税および VAT が免除される制度。ソフトウェア開発、アプリ制作、サーバ管理・クラウドサービス、海外向けデジタルコンサルティング等が対象です。

Qualifying Activities
ソフトウェア開発・研究・設計・保守・実装、および関連する情報システム提供。ただし知的財産の所有・実質的な研究開発実体を証明できることが重要。
Domestic Revenue
ジョージア国内クライアント向け収益は通常課税(分離管理が推奨)。
Application
Revenue Service のオンラインポータルで申請。審査期間は公式 5営業日、実務上は 10〜60日
Status Persistence
Virtual Zone Status は恒久的(ただし ICS 取得時は失効)。
Compliance
税率 0% でも RS.ge ポータルを通じた月次報告が必須。未実施は罰金・ステータスフラグ対象。
2022 Dec Update
2022年12月の Revenue Service 通達により、要件が厳格化。"グレーゾーン"として運用されていた形態の多くが除外対象になりました。
Distribution
VZE の収益も、分配(配当)時には通常の法人所得税が発生します。再投資し続ける限りは実質 0%。
·Adjacent Regime

International Company Status(ICS)

2020年10月に導入された、より新しい制度。IT分野で 2年以上の実績を持つ企業を対象に、VZE よりもさらに有利な優遇を提供します(法人所得税 5%、給与源泉税の軽減など)。VZE と ICS は同時保有不可で、ICS 取得時点で VZE ステータスは失効。成熟した IT 企業にとっては、ICS の方が有利に働くケースがあります。

Corporate Tax
5%
Dividend Tax
0%
Payroll (Reduced)
5%
Comparison Matrix

どれを選ぶか、
一望する。

形態年収上限税率雇用特徴
Micro Business30,000 GEL0%不可個人単独のみ
Small Business500,000 GEL1% / 3%士業・金融・建設系除外
通常の個人事業主制限なし20%ステータス未登録時のデフォルト
LLC制限なし15%(分配時)利益留保で実質 0%
Virtual ZoneIT業限定0%(海外売上)月次報告必須・恒久的
International CompanyIT 2年実績5%(CIT)給与源泉軽減・配当 0%

※ 1 GEL ≒ 55円(変動あり)。業種によっては適用除外あり。

Risks & Pitfalls

知らないままで始めるのが、
最大のリスク。

法人設立・ステータス取得の手続き自体は簡単です。だからこそ、知識のないまま始めると構造的な不利益を受けやすい。以下は、私たちが実際に目にしてきたよくあるケースです。

Pitfall 01

ステータス未登録のまま事業活動

個人事業主として登録済みでも、Micro / Small のステータスを取得していないと自動的に 20% が課税されます。歳入庁から通知が来てから気づくケースも多発。

Pitfall 02

Virtual Zone 適用要件の過信

2022年末の通達改定以降、「IT業なら誰でも」という運用は終わりました。知的財産所有・研究開発実体の証明が求められ、実態が伴わない場合は否認される可能性が高い。

Pitfall 03

現地会計士の質のばらつき

日本のような統一的な会計士資格制度が整備されていないため、誰でも「会計士」を名乗れます。誤ったアドバイスで不利な処理を受ける事例が報告されており、専門家の選定は慎重に。

Pitfall 04

日本側の税務・居住者判定の欠落

現地制度だけに目を奪われ、日本の居住者判定(1年183日ルール、生活の本拠、家族構成など)や CFC 税制との整合性を見落とすと、日本側で追徴を受けるリスク。国際税務は両国の視点で設計する必要があります。

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